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君はイエローチューリップ(沢井章之目線)

2009/05/20 [Wed] 22:53
俺達は朝学校に行くフリをしてみつるの家にこっそり集合していた。
俺はみつるんちの洗面台で髪を整える。
カチューシャをとって、軽く後ろに流した髪を黒いゴムで結んだ。
カチューシャは鈍く黒光っていて、大事に使ってたんやけど年数を感じた。
フラッシュバックする甘くて苦い思い出を噛み締める。
俺も歳とったんやなぁ、とか。
千代ちゃんは前より大分強なったなぁとか、20代のお姉さんに鼻で笑われるようなことを考えた。

目の前の鏡。その前で、キリッとした顔をしてみるけど…
なんか…軟派な感じがしてならん。
ピンクのポロシャツの襟を直す。

「あっきーそろそろいくよー」

「あいーん」

俺は最後にウェストポーチの位置を調節する。
腰少し下ぐらいがベストやね。
2人はもう家の外にでてて、俺を待っていた。
みつるの私服は普段着っぽいのにどことなくオシャレやった。
ペコは帽子めっちゃ好きって言っとって、こじゃれた帽子なんぞ被ってた。チッ!

俺はちょっと気張ってきたつもりやったからか、緊張も重なっているせいか
頭がごっちゃになっとる。メダパニ!

「あっきー…なんかさ、緊張のせいかなぁ? 怖くない?」

「んなわけないわー!」

「はいはい、みつるは小学校行ってから不安になろうねー?」

俺は全然正直になれない。
言ってしまうと、その弱音が真実になってしまう気がして認められない。
怖い怖い。不安。
俺はキンパになって今まで味わったことがない、見かけだけの評価っていうのを味わってきた。
それでもし、もしもやで?
むっちゃんの評価が下がったら、どうしよう。
俺はそれが不安でたまらん。


教室に入れば、案の定俺らはあからさまな好奇の視線を受ける。
その大半はきっと俺に向けられたもんだと思う。自意識過剰かもしれん。
でも俺目立つし。キンパやし。
小学校の教室は俺の時とかわらんかんじの雰囲気やったけど、
俺がでっかくなったぶん、ちょっと狭い感じがした。
むっちゃんは前の方でピンクタイツの足を軽く前後にばたつかせてる。
振り向いたむっちゃんの驚いた顔。
そんで俺達に手を振ってくれるむっちゃん。
それを見て今日初めて俺はここに来てよかった! 俺正解! って思えた。

ふと、隣をみるとめっちゃ顔が固くなっとるみつるが見える。
それに気付いて後ろから手を回して、チョンチョンと指先でペコの肩をつっついた。
ペコは帽子を手で弄びながら、何? って俺の方に視線で問いかけた。
みつるを指差すとペコはみつるに気付いて微苦笑。俺も苦笑。
なんや、一番気張っとるの俺ちゃうやん。不安なの、俺だけやない。
俺はペコと、みつるのデコをつっついてやった。

「みつる、眉間に皺よっとんで」

「お顔こっわーい」

みつるはようやっと自分の顔に気付いてちょっと笑った。
肩竦めて、自分の服装を直す余裕もできたみたいやった。
俺はシャンと背伸びするみつるを見て思わず一緒に背筋を伸ばす。
物怖じせずに、まっすぐ前を見詰めるみつる。
いっちゃん背の低いみつるが、いっちゃん大きく見える瞬間だった。

ペコの方に視線を移動すると、どっかの若いおかんと話しとった。
開校記念日なんで友人の妹の授業参観に一緒に来たんです。なんて、
笑顔でヌケヌケといっとった。堂々と嘘つけるのは俺らの中ではコイツだけやね。
ペコはいっつも無駄に自信がある。
こん中でいっちゃん面倒くさがりで不真面目なくせに自信だけはある。
俺らだめやなぁ、なんて。
そんなんばっか考えてたら、俺は1人で面白くなってきて、1人で笑った。
自信なくしてる場合ちゃうよなぁ……俺はむっちゃんの応援にきたのに。

みつるの次くらいにむっちゃんを大好きなお兄ちゃんにならな!
俺が俺の中で決めたから!(勝手にな!)

俺はなんでか一生懸命むっちゃんの後ろ姿を見つめて、
隣の席なんで男やねんってみつるとブツブツ文句を言ったりした。
むっちゃんのピースサインに俺もピースして、
俺は自分の妹の千代ちゃんのことも思い出して、なんか胸が暖かくなった。


無事に終った授業参観。真っ先にむっちゃんはみつるのとこに走って
なんであっきーやペコちゃんがいるの? と一生懸命みつるに聞いていた。

「俺はな、むっちゃんの味方やから。どこにでも駆けつけてこれるんやで」

ペコにええ格好しー! と肘でつつかれる。
むっちゃんは、みつるから貰ったかすみ草とピンクのチューリップが入った
ちっちゃな花束を大事そうにもっていた。
チューリップが色違いの花束を俺はむっちゃんに差し出す。
俺のは黄色いチューリップ。花言葉は正直。

「むつみ。あっきーくんも大好き!」

照れるわー! って頭かきながら俺もチューリップを渡す。
本当は俺も大好きやで、なんて、恥ずかしくて言えんかった。
俺は正直な男にはなれんかもしれん。
そんでもむっちゃんに大好きって言ってもらえる男なんだなぁって思えた。

だから俺は、もうなんも恥ずかしくない。

俺の可愛いピンクチューリップ(望月みつる目線)

2009/05/12 [Tue] 20:50
1年3組の教室は若いお母さんやおばさんがほとんどで
お父さんは指で数えられる程度しかいなかった。
その中に男子高校生、しかも3人(1人金髪)がいれば目立つのも当然だった。
俺はシャツをピシッと引っ張って自分の服装をチェックする。
俺の格好はシャツとジーンズ。こういう場ってラフな格好でもいいんだよね?

「す、すいません」

俺達3人は頭をさげながら教室に入っていく。
ジロジロと効果音がつきそうなほどの視線を浴びながら俺達はこそこそと窓側に向かう。
むつみの席は窓から二列め、前の方の席。
勿論、後姿でもしっかりと俺はむつみがわかる。
可愛らしさが後姿からにじみでているからだ。胸きゅん。

俺の声が聞こえたのか、むつみはこっそりと顔を後ろに向けた。
むつみは俺達を姿を確認すると、少し口が開いた。吃驚している。
口を一生懸命手で押さえる仕草がとっても可愛い。
俺達が来ることは言ってなかったもんな。
俺が手を振ると、横にいたあっきーやペコもむつみに手を振った。
ちっちゃく手を振ってそそくさと前を向くむつみ。
嬉しそうな顔をしていた……俺はこの顔を見るのと幸せになる。
やっぱり参加してよかった。(例え後でバレて母さんにボコられても・・・!)

まわりを見回すと俺達だけじゃなく、父親もちょっぴり居心地が悪そうだ。
でもピンとまっすぐ立って、堂々と子供を見ている姿は本当にお父さんだった。
それを見て、俺は真似するようにピンと背すじを正す。
俺がこの場で縮こまる必要はないんだと思えた。
例え、俺がまだたったの15年しか生きていない若輩者で、
社会的地位なんてものはちっともないような男だとしてもだ。
俺はそれでも、むつみのお兄ちゃんで、むつみの父親で、望月家の男であるのだから。

ツン、と両サイドから指が伸び、眉間をつつかれる。
吃驚して左右をキョロキョロすると、2人は俺をみて苦笑していた。

「みつる、眉間に皺よっとんで」

「お顔こっわーい」

2人は真面目な顔を作る俺と反対で、満面の笑みだった。
笑う2人に、俺は笑いながら頷く。笑うと一気に肩の力が抜けてしまった。

(そういえば俺も1人ってわけじゃないんだよな…)

皆もしかしたら、気付かないでいるのかもしれない。
自分はいつも1人だと思い込んでいるのかもしれない。
俺は肩を少し上下させて、もう1回シャツを引っ張った。
ちょっとずり落ちてしまっていたズボンをブルー&ホワイトの
ストライプパンツが見えないくらいに引っ張りあげた。

はぁーい、と手を一生懸命あげる生徒達。鈴木先生がむつみをさした。
ナイス先生! 俺は腰の横で小さくガッツポーズ。

「足して5になるのは1と4と2と3です!」

むつみは算数の答えを鈴木先生に一生懸命答えて、
そんなむつみに、当たりです、って大きな声でいう鈴木先生。
喜ぶむつみに俺達も喜んで拍手する。
こっちを見てちっちゃくピースをするむつみ。俺も笑ってピースを返す。

俺はいつでも君が笑ってくれるように一緒にいます。笑顔でいます。
たとえどんな障害があっても。
それは、俺はむつみのお兄ちゃんだからです。

終わりの鐘がなれば、むつみはノートもそのままに
俺に向かって走りだした。眩しいほどのキラキラした笑顔。

「お兄ちゃん!」

俺の左手には一輪の花が握られていた。
学校に来る前に時間があまって、なんとなく寄った花屋で買ったチューリップだ。
(軽いノリが、本気になって、3人で悩みすぎて少し遅刻しました…)

駆け寄ってくる君に俺からピンクのチューリップを。
花言葉は思いやり。
君に俺の精一杯の思いやりを。
触れた手のぬくもりを俺はずっと守ると決めた。

俺の千代ちゃんといったら(沢井章之目線)

2009/05/08 [Fri] 23:09
俺の妹の千代ちゃんは可愛いけど性格がきっつい。
打率はまぁまぁやけど、守備はあんまりなかんじやった。(バレるとしめられるから内緒な!)
頭はすこぶる良いし、猫かぶりやから、まわりの大人は千代ちゃんがめっちゃんこ好きで、
俺はいっつもまわりから頑張りや! と背中とか尻を叩かれてばっかりやった。

それを疎ましいとか、むかつくとか思ったことはあんまない。
面倒やなぁとかは思う。
俺の机にあるPCにむかって真面目な顔をしてる千代ちゃんは肩につくかつかないかの
さらさらの髪を荒っぽい手つきで不機嫌そうにかきあげた。

「あーくんの高校って、偏差値低くもないけど、高くもないから中途半端やね」

「…千代ちゃん、それ心の中で言ってくれん?」

俺の部屋で、千代ちゃんは色んな高校のホームページを見ている。
千代ちゃんは今年受験生やから大変そうやった。
俺はというと、だらだらとむっちゃんの授業参観に着てく服を
漁ったり出しっぱなしにしたりしていた。(ようするに部屋が散らかしてた
千代ちゃんはマウスカチカチカッチカチ言わせて眉間に皺を寄せている。

「まぁ、千代女の子やから、あーくんとこの男子校なんて入れないし。
それに、女子高のが楽しそう」

「おっ、ええやん。文化祭よんで!(俺だけ!)」

「千代はあーくんの彼女探しのために高校行くんじゃないから」

「……(せやね)」

「あ、携帯にメールきた。あーくん千代の携帯取って」

俺のベッドに投げ出されて、緑色のライトをチカチカさせる千代ちゃんの携帯電話。
ライトの緑はあーくんの色や、と笑いながら設定してた千代ちゃんはなかなかにブラコンだ。
携帯電話を千代ちゃんに軽くぽいっと大きな弧を描くように投げる。
マウスを触るのをやめた千代ちゃんは今度は携帯電話をカチカチいわせてた。
ぷっと吹き出しながら笑う顔が、可愛く見える俺もなかなかにシスコンやった。

「か、彼氏?」

「おらんよ。美音ちゃんから。今高校選定中ってメール送ったら『千代ちゃんファイト~』って
 顔文字ばっか山ほど送ってきた。あの子、アホやね」

「他人様の妹をアホ言うたらあかんよ。ホモ漫画の主人公にされんで

「千代男やないし。あーくん安心しい。
 千代がいつか美音ちゃんを真っ当な道に戻してあげる予定やから」

「…ペコが聞いたら泣いて喜びそうやね」

「(描かれたのはペコ君か)美音ちゃんは何で自分の兄弟で漫画描く根性を
 他に使わないんやろね」

千代ちゃんは携帯電話を閉じる。
千代にはわからんわ~と首を傾げていた。
さっきから話に出てる美音ちゃんはペコの妹で、いわゆる腐女子やった。
見た目も声もふわふわほわほわして癒し系?やから、腐ってるのは残念やった。
(俺は別に人様の趣味を否定はせんけど肯定もせん!)

俺は笑いながら数ある服の中からピンクのポロシャツとジーパンだけ残して頷く。
爽やかな兄ちゃんルック!俺の爽やかさよ! 
金髪=遊んでそう な雰囲気を変えてくれ!

あとの服は適当にクローゼットに突っ込んだ。(あとで! あとで片付ける!!!

「……」

千代ちゃんがじーっと見てくる。
なんか。悪いことしとるわけじゃない(サボりは息抜き程度なら正義)けど緊張してくる。

「千代ちゃん…何? じっと見とるけど……」

「あーくん。明日学校なのに何で私服用意しとんの?」

「(ぎく)いや~日曜日ペコとみつると遊ぶからオシャレせんとな~って!!」

「ふ~ん」

細まっていく千代ちゃんの目が怖い!

「な、何?」

「ま、ええけど」

「(ほっ)(バレんかった)」

「バレんようにね」

「(もうバレとる!)」

ニヤニヤしながら俺の部屋から出てく千代ちゃんは意地悪だけど優しかった。

明日明日明日。


幸せな日になりますように!

俺のお姫様(望月みつる目線)

2009/04/13 [Mon] 20:54
俺は母子家庭だった。
妹が生まれてすぐ、父親は他に女を作って出ていった。
それから6年もたつけど、離婚してからは一度も会ってない。
会いたいと思ったこともなかった。(どこかで酷いめにあえ!)
だから、俺の家族は小学校の先生をやってる母さんと小学校に通う激ヤバに可愛い妹だ。

母さんも俺も、むつみを、うちの小さなお姫様を溺愛している。
母さんはむつみが大好きなピンクの洋服をいくらでも買い与えるし、
俺は歌ってと甘えられたら声が枯れるまで歌った。

「むつみ、お兄ちゃんの歌どう!? どう!?」

「ギター上手! むつみお兄ちゃんのギター大好き! 
 歌は下手だからないほうがいい

「むつみがお兄ちゃんに冷たいっ!(でも愛しい!)」

「お兄ちゃん、うざ~い!」

お姫様のお願いはなんでも叶えるのが我が家の当たり前。
だけれど、俺達家族が可愛いお姫様の望みを叶えてあげられない日がやってきてしまう。

むつみの小学校の授業参観日がすぐそこまで近づいていた。

俺は授業参観に親がきたことは一度もない。
別にきてほしいかったわけじゃないんだけど。
ただ、まわりの友達が恥ずかしいと騒ぐのに混ざれないのがつまらなかった。
まぁ、俺が授業参観のときは母さんも授業してるし、しょうがないといえばしょうがなかった。



俺の目の前に座っている母さんは、
むつみの授業参観のプリントを見ながらため息をついていた。

「むつみ、行けなくてごめんね」

「ううん! お母さんも授業参観頑張ってね!」

「むつみ! お兄ちゃんが授業参観いこうか!?」

「お兄ちゃんはちゃんと学校いきなさい」

「むつみの言うとおりよ。授業ちゃんとでなさい」

「……(はい…)」

怒られたけど、家族が教室いっぱいになる時間に、
自分だけ一人ぼっちになるなんて、そんなことむつみには経験させたくなかった。

そんな俺の思いは授業参観の日が近づくたび強くなる。
おかげで最近は授業も頭に入らない。(うん、まぁ、わりといつもだけど!)



「やっぱ俺、明日の午後サボる!」

俺の宣言に目の前の2人は目を丸くする。
ペコはイチゴ牛乳を吸いながら、俺に肩をすくめた。

「その発言、今日で何度目?」

「(え、数えてないし)…3回?」

「正解は覚えてないけど、少なくとも片手じゃ足りない」

ヒラヒラと右手を振るペコの横であっきーが苦笑していた。
呆れられても俺は行くったら行く。

例え、後で母さんにバレてけっちょんけちょんに叱られ倒されても!
震えは武者震いなんだ! 怖いからじゃないんだ! と俺は自分に言い聞かせていた。



「(めっちゃ震えてるし)……しゃーないな。あっきー、俺達もサボるか。むっちゃんのために」

「(もうこれ痙攣やね)…せやね。みつるがおかん怖がって可哀想やしね」

「え!?」

いきなりの2人の発言に今度は俺が目を丸くする。
吃驚しすぎて震えも止まってしまった。

「バレなきゃオッケーやんな」

あっきーは人差し指と親指でわっかを作る。
その奥であっきーの目が笑っていた。

「え…、い、いいの?」

「ええよ! 俺らはいつでも3人セットやろ! 邪魔やって蒲先(担任)がいっとったしな!」

「あ、あっきー! ありがとう!(…でもそれ全然誉められてないよ)」

ペコが俺の肩をポンと軽く叩く。

「将来の可愛い俺のお嫁さんのためだから。任して」

「ちょぉおお!! むつみはお兄ちゃんと結婚するの!」

((うわぁ…))

2人は口元を引きつらせながら俺を見て苦笑いしている。
俺は拳をぎゅっと握って、きたるべきその日を想像した。

3人で授業参観に行くとむつみがピンク色のほっぺをきゅっとあげて笑うんだ。
俺はそれを見てすごく嬉しくなって、幸せな気持ちになるんだろう。
その気持ちを実際に感じるためなら、2人まで巻き込んで! と怒る母さんも怖くない。

…ん?


「……ねぇ、もしかしてさ。母さんにバレた時、2人がいた場合の方が、俺倍怒られない?」

「「……」」

あっきーとペコは2人で顔を見合わせて同時に頷く。

「みつる。気にせん方がいい! ドンマイ!!」

「さーて、俺何着ていこうかな~。奥様受けいいかんじにしよーっと」

「ちょおおおお! 少しはフォローしてよおお!!」



大きい声で叫びすぎて、俺は母さんに怒られる前に先生に怒られたのであった…。

お姫様の笑顔まであとちょっと…
俺の胸は嬉しさがつまって軽くなっていた。


青信号の渡り方(不二家美学目線)

2009/04/04 [Sat] 00:57
平均が一番いい。並よりは良がいい。
失敗したら、最初から成功する気なんかなかったって言えばいい。
俺はカッコ悪いことが死ぬほど嫌いだ。
恥をかくことも、冷や汗をかくこともイヤだ。
だから無難な道を選んでばかりいた。
仲間外れにされないよう、八方美人に色良い返事ばかりして、
たくさんの友達を作った。
馬鹿にされたくなくて、こっそり勉強して成績上位をキープしてみせたりもした。

俺は子供のくせに、うまく世渡りをした気でいたんだ。
どんなに上手くやってるつもりでも、躓いたらなかなか立ち上がれない。
昔からそうだった。

今から7年前、俺が黒いランドセルを背負っていた頃、俺には新しい父親が出来た。
「Hello」
金髪、白い肌、青い目。
母親が連れてきた男はどうみても外人だった。
小さい俺にはものすごい怪獣に見えたほどだった。
俺は思いっきり一時停止をして、
さらに英語で話しかけられてすぐに大泣きした。

ダムが決壊したみたいに目からボロボロしょっぱい水が流れて、
一緒にいた小学校あがったばかりの妹までつられて涙腺ダム崩壊した。
不二家ミニダムがダブルで崩壊、と母親はよくこの話を笑い話にしてくるので、
俺はいつもいたたまれない気持ちになっていた。

その頃のディヴィッド、俺の父親はたどたどしい日本語しか喋れなかった。
だから英語が喋れる母親とばかり喋っていた。
俺は母親と妹をとられまいとしていたから、
英語を喋ってたまるかと意地になっていた。
悲しきかな。そんな俺とは対照的に、適応力のある妹は
いつの間にか単語しか喋れない英会話から羽化してしまい、
ベラベラ英語を喋るようになってしまった。
衛星放送で外国のアニメやドラマを英語で聞いて、
エロスラングの意味を聞いては両親を困らせている妹を
俺はぼんやり眺めていた。
(英語はエロいのならなんとなくわかる! 不思議!)

まぁ、今思うと俺は意地にもなってたけど、
それ以上に恥をかくのが嫌だったのかもしれない。
間違った英語を父親に指摘されて、
言い直す妹を見るのが俺は酷く恥ずかしく感じていた。
幼い妹に劣る自分を想像することすら、
プライドばかりが高い俺には耐えられなかった。
だから俺は英語が大嫌いになったし、父親以外の外人が怖くて、
話しかけられると固まってしまうようになった。
父親が日本語が喋れるようになった頃には、俺もすっかり諦めていて、
まぁカタカナの名字も格好良いからいいかとか思ってた。
(その後、父親は婿に入りました。意味ないだろ!!! ガッカリ!!)

「そういや、boiboi!!メンバー出会ってもう半年はすぎたんちゃう?」

あっきーの声に俺ははっとした。
現実に引き戻された頭はなんだかぼやけたままで、
教室と目の前のプリント用紙がチカチカして見えた。
長く考え事をしていた俺の頭は現実を受け入れたがらないようだ。
ずり下がり気味になっていた眼鏡をあげると視界がはっきりしてくる。
目の前にはみつるとあっきー。
あぁ、そうだ。
俺達は授業中に騒ぎすぎて怒られたうえに、居残りさせられたのだ。
今時漫画でもなかなかないシチュエーションだ。
居残りしてもう1時間は余裕でたっているのに、俺達のプリントは真っ白だった。
(あっきーなんか名前すら書いてなかった)

「そうだね~! 俺達の奇跡の出会いね」

みつるは鼻息荒く語り出す。声が滅茶苦茶でかかった。
俺は体をみつるから離すように捻って、大袈裟にため息をついてみせた。

「俺はどうせならみつるじゃなくて可愛い女の子がよかったな」

「せやね。俺もや」

「こんにゃろおお!!」

机をガタガタさせながらみつるが叫んだ。
静かな教室に響いて、ぐわんぐわんいって、教室が揺れたみたいに感じた。

「ごぉらぁああ!!! 沢井! 不二家! 望月! 静かにやれっつったろ!!」

案の定、様子を見に来た先生にめっちゃくちゃ怒られた。
3人でお互いになすりつけあったら、拳固をくらった。(漫画かよ!)
俺ははしゃぎすぎて先生に怒られて
居残りさせられたことも、拳固をくらったこともない。
boiboi!!のメンバーになってからはバカばっかやって毎日のように怒られている。
仕方なく手をつけるプリントは俺の大嫌いな英語だった。

「ペコ! スペル違うよ!」

「嘘!? あ~…英語消えないかなぁ!」

「…お? みつるも違っとるよ」

「嘘ぉ!?」

「結局ここなんなの? a?e?」

「えー?」

「a?」

失敗しても笑って歩ける俺らは、きっと無敵だ。
恥まみれだって言われても、3人で手を叩いて笑える。

赤信号みんなで渡れば怖くないっていうけど、
いつの間にか青信号を手を挙げて歩くことの方が怖くなってる自分に気付く。
でもこいつらと一緒なら恥ずかしくないと思えるのは何でだろう。
俺はいつの間にかもっともっと馬鹿をやりたい人間になってしまっていて、
間違ってると指摘されることも今なら怖くないと思えるようになった。
注意されても、それがどうしてかわからなくても、腕を耳の横につけて、
手をピンと高くあげて発言できる。

「わかんねーよ!! プリーズ、ワンスアゲイン」

「ぎゃはは! ペコめっちゃカタカナやん!!」

「オッケー!! リピートアフタミー!」


もう1回もう1回。

もしもう1回人生をやり直せるなら、
俺はもっと上手く青信号の交差点を歩ける気がした。

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